高齢者のセックスについて考える
高齢者のセックスを考えるには、社会的にあまり語られることが少ないテーマですが、性的な欲求や親密な関係を築くことは年齢に関係なく、人間にとって重要な要素です。加齢による身体的変化やライフスタイルの変化が影響するものの、多くの高齢者は性行為を続けており、性的な健康と幸福感における役割を重視しています。
以下に、高齢者のセックスについての考察をいくつかの観点から解説します。
1. 加齢による身体的変化とその影響
加齢に伴って体にはさまざまな変化が現れ、性行為や性的満足度に影響を与えることがあります。
a. 男性の身体的変化
- 勃起不全(ED): 高齢になると、血流の低下やホルモンの減少(特にテストステロンの低下)が原因で、勃起を維持することが難しくなることがあります。これはED(勃起不全)の一因となり、性行為に支障をきたす場合があります。
- 射精の変化: 射精量の減少や、オーガズムの強さの低下が見られることもあります。性的な快感自体が変化するため、若い頃とは異なる性的満足を感じることがあります。
b. 女性の身体的変化
- 閉経後のホルモン変化: 閉経後、エストロゲンの分泌が低下し、膣の乾燥や弾力性の低下が起こります。このため、性行為中に痛みを感じたり、性行為そのものが難しくなることがあります。膣潤滑剤の使用やホルモン補充療法が有効なこともあります。
- 性欲の変化: 女性も男性と同様に、年齢とともに性欲が変わることがあります。性欲が減少することもありますが、逆にホルモンの影響が少なくなり、性行為をよりリラックスして楽しむ女性もいます。
2. 性的欲求と心理的側面
加齢によって身体的な変化があっても、性的欲求そのものが完全になくなるわけではありません。むしろ、心身の健康を保つために、性的な満足感やパートナーとの親密さを重視する高齢者が多くいます。
a. 親密さとコミュニケーション
- 性的な親密さの維持: 高齢になると、性行為そのものよりも、パートナーとの身体的・感情的なつながりが重要になる場合があります。ハグやキス、触れ合いなどのスキンシップが、親密さを保つための重要な手段となります。
- コミュニケーションの重要性: 年齢を重ねると、性に関するコミュニケーションがこれまで以上に重要になります。パートナーと互いの性的欲求や不安、身体的な変化について話し合うことが、満足のいく性生活を維持する鍵となります。
b. 心理的・社会的な要因
- 自己肯定感の低下: 高齢者は加齢に伴い、身体的な変化や健康問題から自己肯定感が低下することがあります。これが性行為への意欲に影響を与える場合があります。
- 社会的な偏見: 高齢者が性について語ることに対する社会的な偏見やタブー視が、性的欲求を表現することを妨げる要因となることがあります。しかし、性的な健康はあらゆる年齢層にとって重要であるため、こうした偏見に向き合うことが大切です。
3. 健康とセックスの関係
性行為は、心身の健康に良い影響を与えることが多く、高齢者にとっても健康を維持するための要素となることがあります。
a. 身体的健康
- 血流改善: 性行為は心臓の健康をサポートし、血流を改善する効果があります。特に軽い運動と同じように、適度な性行為は血液循環を促進し、心血管系の健康に寄与します。
- ストレス軽減: 性行為や性的な親密さは、ストレスを軽減し、リラックス効果をもたらすホルモン(オキシトシン、エンドルフィンなど)の分泌を促します。これにより、精神的な健康が維持されやすくなります。
b. 精神的健康
- 幸福感の向上: 性的満足は、自己肯定感を高め、幸福感をもたらすことがあります。性的なつながりを持つことは、精神的な健康や生活の質の向上に寄与します。
- 親密な関係の維持: 性行為を含む親密な関係は、孤独感を軽減し、パートナーとの絆を深める要素となります。特に高齢者にとって、パートナーとの深い関係は精神的な支えとなります。
4. 高齢者のセックスにおける課題と対応策
高齢者の性行為に関連する課題は、身体的・心理的な問題だけでなく、社会的な偏見にも直面することがあります。
a. 性機能障害の対処
- ED治療: 勃起不全(ED)は高齢男性に多く見られる問題ですが、PDE5阻害薬(バイアグラ、レビトラ、シアリスなど)などの治療法が利用可能です。また、生活習慣の改善や運動によっても改善が見られることがあります。
- 膣の乾燥: 閉経後の女性に多い膣の乾燥には、潤滑剤やホルモン補充療法が有効です。潤滑剤の使用により、性行為中の痛みが軽減され、性行為がより快適になります。
b. パートナーとの関係の変化
- 新しい形の親密さ: 高齢者の性行為は、若い頃と同じ形にこだわる必要はなく、親密さや触れ合いを重視する新しい形の親密さを楽しむことが重要です。ハグやキス、マッサージなど、互いの体に触れ合うことで親密さが高まります。
c. 社会的な認識とサポート
- 性教育と医療のサポート: 高齢者の性に対する理解を深めるために、医療従事者や社会全体が高齢者の性的健康を尊重し、適切なサポートを提供することが重要です。性的な問題が発生した際に、気軽に相談できる環境作りも必要です。
結論
高齢者のセックスは、加齢による身体的・心理的な変化を踏まえつつ、親密さや性的満足感を維持することが可能です。セックスは年齢にかかわらず心身の健康に寄与し、パートナーシップを深める大切な要素です。高齢になっても、自分たちに合った方法で性的健康を楽しむことは、生活の質や幸福感を向上させる重要な要素となります。
+ZINE
高齢者の方と、高齢者のセックスについて話す機会があった。一番悩むのは、パートナーのプライバシーをどこまで侵害しないかという心配だそうだ。相手はできるのか、できないときはどうしてあげればいいのか、そういう思いやりが長い年月共にくらしてるパートナーだからこそ思いやるのだ。
なんか美しいなと思うと同時に、それを乗り越えてもらいたいなってとっても思った。セックスとは生殖でなく、コミュニケーションだ。それは私たちが人間だから、セックスをそう変えたのだとおもう。故に高齢者だってパートナーと肌と肌による非言語のコミュニケーションが大切なときはあるとおもう。
ちょっと前までは禁断の話題だった高齢者のセックスがこうやって語られる時代になったことを、嬉しくお思う。このZINEはもっともっと追記していきたいし、当事者の声を集めてみたい。